家系ラーメンの『六角家』が破産した。
私はその原因を特定できませんが、
おそらく働き手を見つけられなかったからではないか。
なぜならセントラルキッチンで作られた
調理済みのスープや具材ではなく、
店内で毎日作っている家系ラーメン店では、
修行が厳しく、働きたい人がいないから。
最近求人サイト「はたらいく」を見ていたら
『からみそラーメンふくろう』
というラーメン屋さんが、
愛知を中心に19店舗を展開しているとあった。
(FC店含む)
2022年までに100店舗を目指して急成長中!
老舗のラーメン店が閉店していく
こんなコロナ禍の中にあって
元気感があふれていた。
そこでホームページを検索して見てみた。
運営会社パッシオーネの佐藤智雄社長は
ブティック経営の会社で
サラリーマンをしていた時、
流行を追って消費され
すぐ廃れて忘れ去られるアパレル販売に
何か虚しさを感じたのか、
その会社の社長に飲食部門の立ち上げを提案した。
自社に飲食ノウハウがないので
FC加盟店として多店舗展開をした。
男なら誰でも心に抱く
一国一城の夢を果たすべき、
人生の折り返し地点の40歳で
思い切って脱サラした。
すでに妻子持ちで相当悩んだはずです。
会社員時代に横浜ラーメン博物館や
博多への出張のついでに食べ歩きをしたところから
彼はラーメンが好きだったのでしょう。
中でも気に入ったのが「からみそラーメン」
退職後その修行のために山形へ行き、
職人の傍らで「盗んで覚える」という勉強をした。
でも結局1度も作らせてもらえずに終了。
名古屋に戻ってからは資金稼ぎと物件探し。
朝はスーパーの品出し、
昼はラーメン店でバイト、
夜は不動産探しと経営の勉強。
お目当ての物件が見つかり
2013年6月4日に
9席の小さなお店を開店。
その時すでに43歳になっていた。
オープン時は毎日10人くらいのお客さんで
残ってしまった自慢のスープを捨て、
所持金も底をつきかけて、
家賃滞納、食材も買えない、知人に借金。
ラーメン店のバイト先で知り合った
今の専務の富田さんには泣きべそ。
それはオープンしてまだ2か月経っただけ。
開店してすぐに行列ができる店は
大々的に広告費をつぎ込むからこそ。
それでも行列しないこともあるが。
資金の乏しい個人飲食店が
最初から行列ができて儲かるなんてほぼ皆無。
なぜ1年間分くらいの余裕資金を持って
開業しなかったのか?
経営の本には普通に書いてあることなのに。
40歳をとうに過ぎてしまい
焦っていたのでしょうね。
「悠長なことを言っていたら
人生あっという間に過ぎ去ってしまう」
「俺の生き様をこの世に残すんだ!」
これからラーメン店を始めようとする人へ
私からアドバイス。
彼はオープン時にまず何をすべきだったのか?
愛知県名古屋市北区辻町2-32
店の住所をGoogle Mapで調べると
決して田舎ではない、マンションが建つ地域。
チャーシューと味玉の無料券として
小さなビラを1000枚作って、
店内にお客がいない空き時間を使って
お店の周辺住民ひとり一人に配布する。
地元の人に愛されない飲食店は
確実に3年も継続できませんから、
まずは半径100メートルの顧客獲得から始める。
近所の人に売り込みなんてとてもじゃないけど…
それができない人は
・商品に自信がない
・商売に罪悪感を持っている
・その両方
この3つのうちのどれかでしょう。
商売はまず身近な友人知人・ご近所に売ることから始めよう。
そうこうもがいている最中、
突如彼のラーメン店に一条の光が!
何と「究極のラーメン」という雑誌から
電話がかかってきた。
2014年新店部門の1位だと。
少ないラーメン客の中にマニアがいたらしい。
雑誌が発売されるのは10月。
それまで何とか資金を工面して
いざ雑誌が発刊されると
その週末は店内満席の行列。
『ラーメン発見伝』という漫画に
客はラーメンを食っているのじゃない。
情報を食っているんだ!
というセリフが出てくる。
つまり料理が美味しいかマズいかの判定は
・世間から美味しいと評判だったり
・ランキングで1番人気だったり
・社長や上司がうまそうに食べていたり
・仲の良い友達グループとワイワイ楽しんで食べたり
たとえ自分はそんなに美味くないと感じても、
美味しいと感じてしまう・感じなきゃいけない、
そんな心理が働く。
要は人間には所属する世界から疎外されたくない
「仲間外れはイヤ!」
という生存心理が働いている。
特に帰属意識(横並び意識)の強い女性に
その傾向が見られる。
男性の場合は上下関係。
おまえ、あのラーメン食べたことのないの?
遅れてる~!
何だと!?
俺はこの道10年のラーメン通。
負けてたまるか!!
ラーメン仲間からバカにされたくない。
マウントを取るためにも、
俺も一杯実食して、
俺流の御意見・ウンチクを披露して、
「おっ知ってるね」と尊敬の目を向けさせたい。
男は何事もどちらが上かの勝負意識。
そりゃ疲れるわ。
「このことから私が何を飲食店経営者に伝えたいのか?」
料理は味がいいから売れるというものではない。
『料理の評価は、評判と感情で決まる』
と知ってもらいたい。
その一例が日本マクドナルド。
外食チェーン店企業の中で店舗数1位。
ブランド単体による売上高も1位。
(各外食グループの総合売上高ならゼンショー)
ハンバーガー業界2位のモスバーガーの方が
味(品質)は上だと思うが、
巧みなマーケティングで
広告宣伝によるイメージアップの結果、
マクドナルドの方が圧倒的に強い。
全外食企業の中でも圧倒的な利益を出す。
料理人たちよ、
味にこだわるパワーの半分を
マーケティングと顧客心理の勉強に注ぎ込んで
店舗運営または飲食店開業をせよ。
私から「からみそラーメンふくろう」の佐藤社長に
個別アドバイスを。
ふくろう食堂はパッとしない。
からみそラーメンだからラーメン屋だけでいい。
しょうゆラーメンや台湾ラーメンを出すと
一番ウリであるからみそラーメンの足を引っ張る。
からみそラーメン1本とトッピングだけでいい。
ドリンクメニューはビールだけですか?
からみそに合うソフトドリンクやジュースを出していい。
厳選したワインやチューハイ、ハイボールも出していい。
利益率の高いドリンクで儲けろ。
フクロウは夜行性。
ドリンク併用のラーメン屋なら
昼間の営業は休んで仕込みに注力する。
それが可能だ。
「長時間営業=儲かる」ではない。
1日100玉限定にするのもいい。
いつでも食べられるは、今食べなくてもいい、
と思われては行列効果を生み出せない。
限定性がもたらす効果は大きい。
・即金性が高まる
・仕事量の負担減
・精神的メリハリがつく
・雨天でも来店したい客が現れる
・それならば夫婦2人で開業したいFCも出てくるはず
もう1つ言わせてほしい。
寿がきやとのコラボ商品はNG。
生麺はゆで加減が大事。
一般家庭の主婦にその理解があるかどうか。
下手な調理で「からみそラーメン」全体の評判を落とす
危険性があることに注意。
「なあんだ、こんなもんか…」と。
それにスガキヤのグループ系列の
ラーメン店だと思われる可能性もある。
同じ女の子のマスコットキャラで
同じだと思われても仕方がない。
※寿がきやは即席麺や生タイプ麺の製造会社。
※スガキヤ(Sugakiya)はラーメンと甘味のファストフード店。
(両社はスガキコシステムズの支配下にある)
ふくろうラーメンはファストフードとは違う路線だと思う。
異なる戦略ではブランド棄損の恐れがあるので
できれば販売中止がいいと思う。
同じブランドでのインスタントカップ麺は論外。
安価で手軽なカップ麺は安っぽいイメージを拭えない。
コンビニで売れば売るほどマイナス効果になる。
宣伝としての戦略なら愚策だと思う。
それは本店での営業にも影響が出る。
世間ではインスタント食品に
ヘルシーなイメージは皆無だから。
もう1度脱サラした動機を思い出してほしい。
一時のトレンドに流され廃れていく虚しさではなく、
店主とお客とのダイレクトな交流を通して、
手ごたえのある感謝と笑顔を受け取りたかったはずです。
コンビニ内のカップ麺販売にそれがあるのですか?
会社経営にはブレることのない
経営者の夢、哲学、理念が必要です。
同じ日にアルバイト求人サイト
「タウンワーク」をチェックしていたら、
『ラーメン魁力屋』が
近くのイオンモールに新規オープンするとあった。
募集内容にはなぜかアルバイトではなく正社員。
しかも月給26万円。
そんなに儲かってるのか!?
ホームページを見ると
2005年創業から15年目で
100店舗突破している。
(ほぼ直営店でしょう)
価格帯は一般的で、高級路線ではない。
利益を出すためには数を売っていく戦法です。
おそらく原価率は20%。
何でも社長の藤田宗(つかさ)さんの曽祖父・祖父は
明治から続く京都の醤油問屋。
大手醤油メーカーの攻勢で
小さな蔵元は廃業か瀕死スレスレ状態にあり、
子孫が醤油ラーメンチェーン店を増やしてくれれば
消費が生まれ、蔵元が生き返る。
品質のいい醤油を魁力屋のために
安く卸してくれるのでしょう。
それでも月給26万円というのは
早朝の仕込みや準備、
閉店後の残業などが含まれてのことだと推測できる。
上記のからみそラーメンふくろうでは
「月給28万円~※固定残業代6万8000円(残業45h分)含む」
とあることから、
やはり飲食店はハードな仕事だと断言します。
(私も飲食関係で働いてました)
藤田社長へのアドバイスは
ネーミングの大事さについて。
現在、特製醤油味玉ラーメンが売れ筋だと思います。
その名称にお世話になった藤田家先祖への
感謝と敬意を込めて
Fを入れてはどうかなと。
つまり「特製醤油F味玉ラーメン」と。
お客さんはメニュー表にあるFを見て想像する。
このFの意味は何であろうか?と。
魁だからFirstのFなのか
力だからForceなのか
はたまた夢見るFantasyのFなのか
いや飲食だからFreshなのだろう。
お客様、そのFは藤田のFでございます。
我々魁力屋がこうして繁盛できているのも
藤田社長の先祖が受け継いだ醤油のおかげ。
その感謝と報恩を忘れないために
メニューにFをはさんでいるのでございます。
これで創業15年の若い会社のイメージが
伝統的な歴史にバックアップされ、
特に年配者に好印象。
「へぇ~そうなんだ」と
1つの謎が解けてラーメンの味にスッキリ感も出る。
ただアルファベットのFを付けただけで
「普通の醤油ラーメンじゃないんだ」と
顧客の感情を動かせるのです。
私たちは物語が大好きな存在です。
物語を書き、読み、話し、聞き、伝える。
企業やお店に物語(歴史)があるならば
顧客や従業員にも物語がある。
売上や店舗数の増加を
血眼になって追い求めるのも悪いことではないが、
ひとり一人に物語があり、夢がある。
脱サラして一国一城の主になるのが夢な人。
京都ラーメンを世界に広げるのが夢な人。
六角家は店主の夢に共感し、
その夢を自分の夢として共有する人がいなかった。
それが原因で破産してしまったのだと思う。
ふくろうも魁力屋も急成長中。
新規に従業員を雇って
勢力拡大を図りたい野心旺盛な経営者の夢が、
その従業員の夢を食い殺してやいないかどうか。
夢を捕食して生き永らえる害虫企業になっていないかどうか。
人口の数だけ夢がある。
夢の数だけ物語がある。
厳しい飲食業界です。
それでも共に夢を語り合える人が集まってくる。
そんな魅力ある会社経営を夢にして頂きたい。
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