ベトナム計画投資省、JICAに新幹線FSを正式要請

(日越の良好な関係に発展すればいいですが)

ベトナム計画投資省は今月8日、国際協力機構(JICA)に対し、南北高速鉄道(新幹線)の事業化調査(FS)を正式に要請した。JICAが11日、明らかにした。しかし、新幹線はベトナムの年間国家予算の3倍近い5兆6,000億円の巨額資金を要することから、本格的な事業化は10~20年先を見込んだ話となりそうだ。【遠藤堂太】

首都ハノイと商都ホーチミン市を結ぶ高速鉄道ルートは1,570キロ。非電化・狭軌(1,000ミリ)・単線の南北統一鉄道(在来線)の1,726キロに比べ156キロ短い。

関係者によると、先月のグエン・タン・ズン首相の訪日前に、来年の新幹線技術によるFS実施と人材育成に関して、非公式な要請が日本政府機関にあった。FSを行う区間は北部ハノイ~ビンの295キロ、南部ホーチミン市~ニャチャンの362キロだ。

一方、JICAは試案として中部ダナン~フエ(78キロ)を建設する提案をしていた。同区間は人口が少なく用地確保が容易で、22億米ドル程度の資金で建設が可能だ。約10キロのハイバン峠トンネルは在来線も先行乗り入れさせて、実験線や沿線住民対応のモデルケースとして活用する考えだった。

■越政府、20年開通目指す

ベトナム政府は2020年の部分開業を目指すが、難しいのが現状だ。

JICAは、新幹線が採算可能な社会・経済状況になるのは36年と試算する。ベトナムは1人当たりの国民総所得(GNI)が08年で910米ドルにすぎず、沿線人口も少ないことや財源の問題から妥当と言える。一方、在ベトナムの日系メーカーでは、新幹線よりは貨物も輸送できる在来線の複線・高規格化を求める声も強い。

ベトナムとともに米国・ブラジルでも新幹線建設計画がある。だが、米国西海岸のサクラメント~サンディエゴ間の約1,100キロ(サンフランシスコ~ロサンゼルスの約700キロを含む)ですら、全線開通は30年を予定している。

■日本企業の反応は

新幹線技術のソフト・ハードの海外輸出を狙うJR東海。だが、ベトナムに関しては、「事務所設立の計画はない。米国のように法的な素地がベトナムは整っておらず、検討段階に入っていない」との反応だ。

ある車両メーカーも、「車両販売とともにメンテナンスでの継続的な収入がカギとなる。だが、円借款で来年着工予定のホーチミン市の地下鉄(都市鉄道)1号線でも需要は48両だけとボリュームが少ない。実需が見えないベトナム新幹線は未知数」と語る。

一方で、今回の決定を歓迎する声も大きい。「日越3大事業の目玉が、ようやく形として動き始めた。駅周辺の宅地開発など、日本のノウハウをベトナムで生かせるかもしれない」(在ハノイの日系企業)。

来年5月の国会で新幹線建設が審議されるが、今後の日越官民の息の長い取り組みが注目される。

なお、JICAは、2030年までのベトナムの交通整備計画を調査する「持続可能な総合運輸交通開発戦略策定調査(VITRANSS2)」を2007年から実施。この中に高速鉄道事業も盛り込まれており、今年度内に調査結果が報告される。

<ベトナム>

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