挑戦先の方向性には、顧客情報から探りを入れる。

「洋服の青山」で知名度が高い
紳士服業界首位の青山商事は、
今やスーツ事業だけでなく

・カジュアル服「リーバイス」(FC契約)
・同上「アメリカンイーグル」(2019年に撤退)
・クレジットカード事業
・印刷・メディア系
・100円均一ショップ(ダイソーとの合弁)
・総合リペアサービス「ミスターミニッツ」
・飲食店「焼肉きんぐ」「ゆず庵」(FC契約)
・古着リサイクル「セカンドストリート」(FC契約)
・「エニタイムフィットネス」(FC契約)

さまざまな業種に手を出している。

青山商事株式会社
青山商事のニュースリリース、企業情報、株主・投資家向け情報(IR)、採用情報などをご紹介しています。

2005年6月に青山理社長の代になって
なぜ多角化を推進せねばならなかったかというと
スーツがどんどん売れなくなっているから。
(粗利益率は約50%らしい)

スーツとは何の関係もない業種に手を出すとは
青山社長の焦りと会社の混迷が見えてくる。

スーツ販売は2007年をピークにして

・リーマンショックによる不況
・クールビズの浸透
・フリーランスの増加
・カジュアルなビジネスウェアの台頭

などが原因で、きれいな右肩下がり。
そこにコロナがトドメを刺して
2021年3月期は創業初の営業赤字に転落した。


(日経MJより)


(会社HPより抜粋)

上の円グラフを見て下さい。
セグメント別の売上高の割合です。
ビジネスウェアが70%と圧倒的なのは一目瞭然。
その他が似たり寄ったりのパーセンテージ。

青山はアパレル企業だから
カジュアルウェアが2番目に数字がいいはずなのに、
100円ショップとリペア事業の方が上なのはどうして?

会社HPを見ると
カジュアル事業であるリーバイスのFC展開は
コロナもあってか損益マイナス。
フランチャイジーのため実店舗での販売しかできない。
おいしいネット販売は本部が指揮っている。
ここはアメリカンイーグルと同様に撤退すべきです。
オリジナルのカジュアルブランドを創出すべきです。

リペア事業のミスターミニッツもマイナス。
2015年12月に買収した事業なのだが、
売上高はあるのに利益が全くない。
これは職人の人件費の高さと、
ほとんどの店舗が駅ナカにあるため
高額なテナント費が利益を圧迫しているからでしょう。
いっそ売却を検討してもいいと思う。
もしくは駅ナカではなく、店舗内に設置するか。

100円ショップ事業は、利益率は低いがプラス。

ホームページを調べると、
洋服の青山の店舗を改装し
ダイソーに業種転換している店舗が多いようです。

なぜダイソーなのかというと
同じ広島に本社がある企業同士の縁なのでしょう。

私は100円ショップは安いイメージが強いので、
青山のスーツも安もんだろうと連想されて
スーツ販売の足を引っ張っていると推測する。

青山社長は今少しずつ伸びている
個別オーダースーツに力を入れていくと言う。

ならば100円均一=中国製=低品質というイメージは
既製品スーツからの脱却の足かせになるので、
100均事業も売却した方が賢明ではないかと。
(AOYAMAというネームを隠しSEIGOならOK)

オーバーストアとして
閉鎖した店舗の余地を活用するため、
2011年から㈱globという子会社を設立し、
外食チェーン上場企業の
物語コーポレーションのFC展開をしている。

焼肉きんぐ:37店舗
ゆず庵:13店舗
(2020年9月現在)

店舗は年々増えています。

が、飲食店もオーバー気味で
コロナ禍により外食店の適正淘汰がなされたと思う。

居酒屋などが閉店される中で
焼肉店が健闘しているようですが、
あなたなら毎日焼肉を食べたいですか?

同じスーツを着て出勤するサラリーマンも
毎食違った料理を食べているはずです。

かつてユニクロが野菜販売をして失敗したことがある。
2002年にネットと実店舗でスタートしたが、
2年も持たずに撤退。
(30億円程度の赤字で済んだのは勇退)

その原因は複合的だと思うが、
私が思うに食品は腐るので在庫管理が難しい。
生産から販売までの流通がアパレルとは全然違う。
それが一番の原因だったのではと推測しています。

長らく野菜を販売している専門ストアを買収した後、
そのノウハウや経路を吸収利用してから
スタートすべきだったと思う。
すべて整ってから起業するノロマよりもマシだが。
(ユニクロ野菜はおいしかったという評価はある)

2000年創業のオイシックスの発展過程を見ると
すべて自前でやるのは限界があるので、
その道の専門企業を統合して現在に至っている。
食ビジネスは難しいのが分かりますね。

その点、青山商事の外食FC事業は
すでに成功モデルをマネすればいいだけの
フランチャイズ展開なので、
新分野へのスタートとしては賢い戦略だった。

紳士服業界2位のAOKI
ネットカフェやカラオケ、ブライダル事業をしている。

どれも飲食系ビジネスではないところを見ると、
経営者はビジネスの根本を理解している人だろう。
しかも他社の子分となるFCではなく
オリジナルブランドとして経営している。
青木彰宏社長の方が経営が上手だと思う。

スーツ店舗の閉鎖跡地や店舗縮小による余地を
完全子会社の快活フロンティア
有効利用している。

驚きなのが2019年6月にフィットネスジム1号店をオープン。
2年も経っていない2021年1月現在
60店舗以上と拡大しているのは、
スーツ販売の激減と、
健康・体型ニーズの高まりの証拠。
この時代の流れを事実として直視しなければいけない。

洋服の青山は本当に焼肉店を拡大していっていいの?
飽食の太鼓腹では似合うスーツはどこにもない。
私はその戦略に疑問視しています。

青山商事のグループ会社の中で
カード事業「青山キャピタル」に明るい兆しが見える。
会員数が年々増えているから(現在430万人)
利益もしっかりある(営業利益率はスーツ販売よりもいい)

「なぜAOYAMAカード会員が増えているのか?」

スーツが売れないとされていても
スーツを愛着しているビジネスマンは確実にいる。
しかも安物の既製品ではなく
青山のスーツを選んでくれている。
そうでないならばどうしてわざわざAOYAMAカードを作るのか。
スーツ(特にオーダーメイド)は高いから
少しでも割引を狙ってのことだと思う。

利用者はおそらく営業マン。
外国ブランドスーツを着て営業に行けば
「高いスーツ着やがって、偉そうに」
と思われては成約を逃す。
かといって安い中国ブランドではセルフイメージが落ちる。
それならば日本ブランドにしよう。

体形にきっちり合ったオーダーメイドスーツは
ダボダボを着用するよりも
仕事がデキそうだと好印象を与える。

せっかく自分用に作るのだから
少しくらい高くても高品質にこだわりたい。

青山商事の本格オーダースーツブランド

UNIVERSAL LANGUAGE MEASURE’S

ここに注力していくとする青山社長の戦略は正しい。

カード契約者の顧客情報は宝です。

顧客情報で一番重要なのが
性別と生年月日(年齢)

利用者の多くは20代から40代のビジネスマンでしょうから
年齢さえ分かれば
今何を求めているのかが分かる。

20代半ばならファッション、車、グルメ関連
20代後半~30代前半なら結婚関連
30代半ばならベイビー関連
40代ならマイホーム・ダイエット関連
50代なら健康・美容関連

住所も分かるはずですからダイレクトチラシを打てる。

となるならば
青山商事はスーツ小売でない異業種の他社と協業して
(専業の会社を選ぶのがベター)
カード利用者へ販促を仕掛けていく。

具体的提携先企業名は

中古車販売:ネクステージビッグモーターグッドスピード
レンタカー:ニコニコレンタカー
婚活サービス:IBJタメニー
ベイビー用品:西松屋キムラタン
マイホーム:地元の建設会社がいい
ダイエット:24/7workout
健康・美容:さまざま

中小企業なら買収して傘下に治めるのもあり。
(買収=お金でスピードを買う)

※すべて自前は遅いので決してやらないこと。

コロナが無かったとしても
時代はスーツからカジュアルに移行していた。

アップルやフェイスブックの経営者を見たら
人前でもシャツとジーンズ姿でいる。
社内でもスーツを着る従業員はほぼいないでしょう。
日本でも必ずそうなる。

皆が同じようなファッションで
同じ企業風土の中で働いて
どんな素晴らしいアイデアが生まれるというの?

会社とは軍隊でも刑務所でもない。

知的創造が要求される場所でなくては
この令和時代には消費者から見向きもされなくなる。

昭和な古臭い画一的な会社に
優秀な新入社員なんて絶対に入ってくるわけがない。

「スーツ販売はもう元に戻らない」と
青山理社長自身も自覚している。

紋付袴を着る一般人はほぼいない。
タキシードも結婚式で着るくらいだろう。
ビジネススーツはカジュアルスーツに
確実に移行していく。

『青山商事は働く人のために働く会社』

紳士服を販売して成長できた。
ビジネスマンのおかげで今がある。

そうならば洋服に固執せず、
すべてのビジネスマンの自己実現・幸福のために
何でもやってやるぞという意気込みで、
新生アオヤマに生まれ変わらなければならない。
でないと消えていく運命が待つ。

不透明時代の混迷から脱出するために
欠かせない1つのもの。
それは挑戦です。

今ビジネスで焦りを抱えているすべての人にも
それをどうか刻んでほしい。

コメント

  1. 山田直樹 より:

    トリドールの粟田貴也社長もスーツを着ていません。

    https://www.kobe-np.co.jp/news/keizai/201912/0012922527.shtml

    (以下記事の抜粋)

    ところで、自身のファッションが以前と変わりましたね。
    ロングTシャツにデニムパンツ、スニーカー…。
    アップルの創業者、故スティーブ・ジョブズ氏みたいです。
    世界企業を目指しているからでしょうか。

    「昔はスーツを着ていましたね。軽く見られがちな外食業界の人間だからこそ服装はちゃんと、と思っていました。今、全部『ユニクロ』なんですよ。ユニクロって、すごい会社ですよね。なかなかああはなれない。リスペクトの念から着ているのかと言われれば、そうかもしれない。夜中に通信販売で5枚単位で買っています。ジョブズは合理的ですね。毎朝着るものを考えなくていいというのは、楽ですよ。当社の社員も、スーツではなく好きなスタイルで出社しています。スーツが当たり前、と限定してしまわず、自分の好きなスタイルでいいじゃないですか。自由な発想は、そういうところから生まれるんじゃないでしょうか」

    スーツ販売量は確実に減少方向です。
    これには逆らえません。

error: Content is protected !!